投げつけられた入れ歯の行方…。

前に勤めていた歯科医院での話です。院長先生は男性で、腕の良い先生だったのですが、プライドが高く、気が強いのが難でした。

時々、難癖をつける患者さんと口論になる事もしばしば。

しまいには、「お金はもう良いから、うちの病院にはもう来ないでくれ??」と言い放った事もありました。

また、スタッフがミスをすると、チッ!っと舌打ちをするのは日常茶飯事で、酷い時は、治療道具を投げつける事も。

私自身は経験した事はありませんでしたが、歯科の業務に慣れない新人さんで道具を投げられた人は何人か見てきました。

それでも、院長先生の腕は確かなので、患者さんは絶えないのですが。

ある日、入れ歯の修理の治療の患者さんがいらっしゃいました。

いくつかあるバネの中の一本をまず、切断しなくてはならなかったのですが、右のバネを切るところ、左のバネを歯科技工士さんが切ってしまいました。

それは明らかに、院長先生の言い間違いで、技工士さんは指示通りに切断しただけだったのですが、何せプライドが高いので、自分の言い間違いを認める事はなく、何を思ったか、技工士さんを患者さんの前に呼びつけ、患者さんの入れ歯を患者さんと技工士さんの目の前で投げつけたのです。

患者さんも技工士さんもスタッフも、顔が真っ青になりました。

投げつけた入れ歯を拾おうとしましたが、あたりに転がっている気配はありませんでした。

院長先生が、「早く探せ!」と言うので、スタッフは、床を這いつくばって入れ歯を探す事15分。

私は見つけました。

投げつけられた入れ歯は、院長先生のズボンの裾にバネが引っかかって、ずっと足元にあったのです。

「先生、失礼します。」と言った時の先生の顔、患者さんやスタッフのキョトンとした顔が忘れられません。

先生のズボンの裾から入れ歯のバネを外す瞬間、この上ない気まずさを味わいました。

あ~隠居して自分で、庭のリフォームでもしていればいいのになぁと思いました。